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信託型ストックオプションとは?(後半) - 最新トレンドと税制改正の影響を深掘り
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 前半部分ではストックオプションの基本的な概要について詳解しました。後半部分では、その具体的な種類を詳しく紹介し、 特に最近ニュースで話題になっている「信託型ストックオプション」について深堀りしていきます。 [目次] ・ストックオプションの種類 ・信託型ストックオプション ・まとめ ストックオプションの種類 ストックオプションは、付与の際に支払いが発生するかによって無償と有償に分類することができます。 この分類によって適応される税率や、税金が発生するタイミング、各種所得の分類が異なる点に注意が必要です。 ⚫︎ 無償 ①無償税制適格ストックオプション ・行使期間についての厳しい要件を満たす必要がある ・権利行使時は課税されないが、株式譲渡時に譲渡課税が適用される(最大約20%) ・所得税減免にはならない ②無償税制非適格ストックオプション ・行使への要件はない ・権利行使時に給与課税(最大約55%)、株式売却時に譲渡課税が適用される 〈活用型〉1円ストックオプション ・行使価格が1円のため金銭的負担が少なく権利行使しやすい ・退職金としてよく利用され、課税も退職金扱いになる(最大約25%) ⚫︎ 有償 ・権利付与の際にストックオプション1つあたりの価格である発行価額に対する支払いが発生するため従業員の資金的余裕が必要 ・権利を行使するまでは課税されない ・株式譲渡時にのみ課税されるため無償のものより税率が低い(最大約20%) 信託型ストックオプション 信託型ストックオプションは、どの種類に分類されるのでしょうか。実は、信託型ストックオプションは、 有償ストックオプションに分類され、その一種であると言えます。具体的な仕組みは次の通りです。 ①企業が発行したストックオプションを全てまとめて信託機関に割り当てる ②権利行使前の保管期間中に信託機関からは、従業員にはストックオプションと交換できるポイントを付与する ③期間終了後に企業が成果に応じて指示した数のストックオプションが信託機関から割り当てられる この制度は、従来のストックオプションでデメリットとなっていた既存株式の価値低下や、権利付与時期によって利益に差が出る従業員の不満を解消すべく、 2014年に弁護士の松田良成氏とプルータス・コンサルティングが考案した制度です。現在では既に約800社の企業が導入し、うち約100社が上場しています。 では、なぜこの制度が今話題になっているのでしょうか。それは企業と国税庁との間で課税の取り扱いに関する見解が分かれているからです。 信託型ストックオプションの課税に関して、多くの企業は、信託型ストックオプションが有償型ストックオプションの活用型であるということから、 株式売却時に譲渡所得として課税(約20%)されると認識していました。 しかし、国税庁としては、信託型ストックオプションに関しても役職員へのストックオプションの付与を目的としたものであるという立場を示しています。 つまり、株式取得時点で給与所得として課税(約55%)されるべきとの立場を明らかにしました。 さらに、既に行使されたオプションについても、時効となる5年以内のものは遡及して源泉徴収が必要との見解を示し、両者の間で対立が起きています。 この対立は、権利行使を行った個人だけでなく、企業にも影響を与えています。企業は決算の修正を迫られ、スタートアップや新規上場企業では、 資金繰りに影響を与える可能性があります。 さらに、スタートアップ企業の報酬に重税がかかることとなれば、日本政府が推進するスタートアップ支援の方針と相反することとなり、 一般企業でも株式報酬の導入が進まなくなる恐れがあります。 まとめ 多くのベンチャーやスタートアップは、報酬負担を軽減するためにストックオプションを活用しています。 しかし、最近の国税庁の見解公表により、個人と企業双方の税負担増と人材流出リスクが生じています。これは特に財務的に厳しい企業にとって大きな打撃となり得ます。 この問題を受けて、経済産業省と国税庁は税制改正とルール緩和に向けた動きを見せています。 これにより、信託型から税制適格ストックオプションへの移行が進むことが期待されています。 しかし、企業は新情報を素早く把握し、資本政策を見直すなどの対応が求められています。 そして、国税庁の公表後に株価が下落した企業もあり、市場全体への対策が求められています。 海外と比較してストックオプションの制度が未整備との指摘もあり、税制改正と適格ストックオプションの動向が注目されます。 税務と会計ルールの整備が重要であり、関係各所の議論と連携が求められています。
2023.07.30
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信託型ストックオプションとは?基本とメリット・デメリットを徹底解説
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 最近、注目を集めている「信託型ストックオプション」についての詳細を理解している方はまだ少ないかもしれません。 このブログでは、信託型ストックオプションの基本的な仕組みから具体的な活用例、さらにはそのメリットとデメリットまで、2部構成で詳しく解説します。 今回の前編では、まずはストックオプションが一体何なのかを説明し、その後に活用例とそれに伴うメリット・デメリットを一緒に探っていきましょう。 [目次] ・ストックオプションとは? ・ストックオプションのしくみ ・ストックオプションのメリット・デメリット ・まとめ ストックオプションとは? ストックオプションとは、元々は資金力が乏しいスタートアップが優秀な人材を獲得するためにアメリカで始まった制度です。 英語で、「ストック」は株式を、「オプション」は選択肢を意味し、これらは一定期間内に予め決められた価格で株式を購入する権利を指しています。 ストックオプション制度とは、会社が従業員や役員等に対してその権利を付与する制度のことです。 この制度により、ストックオプションを受け取った従業員や役員は、将来的に株価が上昇した際に、市場価格よりも低い価格で株式を取得することが可能になります。 その後、これらの株式を市場価格で売却することで、株価と購入価格の差分を利益として得ることができます。 なお、株式を取得することを「権利行使」と呼びますが、この権利は放棄することも可能です。したがって、株価が下落しても権利を行使せず、損失を避けるという方法もあります。 日本では1997年5月の商法改正によってストックオプションが認定され、1999年の東京証券取引所マザーズの開設以降、利用が広まりました。 現在では上場企業の約3割(※1)、2020年の新規上場企業の9割近く(※2)が導入しています。 ストックオプションは新株予約権(※3)と混同されがちですが、新株予約権は社外向け発行も含まれるため、ストックオプションはその中の一種で、 従業員や役員等の社内向けの権利と理解しておきましょう。 ※1 ELBORDE by Nomura「東証上場企業の約3割が導入するストックオプションとは。従業員持株会などとともに解説」(2023年6月23日閲覧) ※2 プルータスコンサルティング「No.123 2020年の新規上場企業におけるストック・オプションの事例調査(2021年5月31日号)」(2023年6月23日閲覧) ※3 新株予約権:一定の期間内に配布元の株式会社に対して行使することによって、その会社の株式を前もって決められた金額で取得できる権利のこと。 権利行使に対して予約ができる新株である点が通常の新株と異なります。社外の投資家等も取得が可能な新株予約権のうち、 社内の従業員や役員等に付与するものをストック・オプションと呼びます。 ストックオプションのしくみ ストックオプションは、株価が将来的に上昇したタイミングで権利を行使し、会社の株式を取得・売却することで、株価上昇分の利益が得られる仕組みです。 例えば、現在の株価が1株1000円のA社で、「5年以内ならいつでも2000株まで、1株1000円で購入できる」というストックオプションが付与されたとします。 1年後、A社の株価が倍の1株2,000円まで上昇した際に、ストックオプションの権利を行使したのちに、市場で売却した場合、1株あたり1,000円の利益を得ることができます。 ストックオプションのメリット・デメリット ここからは、ストックオプションが持つメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。 メリット① 従業員のモチベーション向上 会社の業績向上と株価の上昇は相関性があるため、従業員の業績向上への意識やモチベーションの向上につながります。 現在、企業ではこの利点を活用して、ストックオプションをインセンティブとして導入するケースが多いです。 メリット② 資金負担なく優秀な人材を確保できる 財務の余裕がない企業でも、ストックオプションがあれば株価上昇を期待する優秀な人材が集まります。 また、権利行使前の退職を避けられるため、早い段階での人材流出を抑制する効果もあります。 メリット③ 従業員のリスクが軽減される ストックオプションでは権利を行使するまで実質的な損失が発生しません。仮に株価が下落しても、権利を行使せずに放棄することが可能であるため、リスクが限定的です。 デメリット① 株価が下落すると従業員のモチベーションが低下しかねない 株価が下落した際は、せっかくインセンティブとして付与された権利を行使できない状況は、従業員にとってモチベーションの低下の要因になります。 デメリット② 大量発行による株式の価値低下 ストックオプションを繰り返し発行すると、既存株主の保有する株式の価値が下がっていきます。既存株主への影響も発行時に考慮する必要があります。 まとめ 前半部分では、ストックオプションの概要としくみについて説明しました。なぜ取り入れる企業がこの制度を導入する理由については、皆様に理解いただけたと思います。 後半部分では、最近ニュースで注目を集めている「信託型ストックオプション」が、なぜ話題になっているのかについて迫ります。
2023.07.22
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なぜ日本株が再注目されたのか?日経平均株価33年ぶり高値の背景を解説
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 「日経平均」という言葉、日ごろからよく見聞きしますよね。皆様は、日経平均株価の値動きについて、どこまで把握していますか? そもそも日経平均株価は、日本経済新聞社が東京証券取引所「プライム市場」に上場する銘柄の中から225銘柄を選定し、その株価をもとに算出する指数のことです。銘柄は定期的に入れ替わります。 今回は、昨今話題になっている日経平均株価の上昇と、その理由について、わかりやすく解説していきたいと思います。 [目次] ・日本株が再注目されたきっかけ ・日経平均33年ぶりの高値更新 ・理由1:ファンダメンタルズ(経済の基礎的状況)が悪くない ・理由2:円安と輸出企業の業績向上 ・理由3:東証によるPBR低迷企業への要請 ・理由4:引き続き割安な日本株 ・まとめ 日本株が再注目されたきっかけ 昨今の日本株は、力強い成長をみせるアメリカ株と比較すると、投資対象として見劣りしてしまっていました。 しかし、そんな日本株が再注目されたきっかけとして、4月11日の「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェット氏の2度目の訪日が挙げられるでしょう。 2011年の来日からおよそ12年ぶりの訪日でした。この際、バフェット氏は、日本の5大商社株(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)の保有比率を全て7.4%まで引き上げ、かつ、追加投資を示唆しました。 この出来事は日本株を世界に広く周知させる非常にシンボリックな出来事となったといえます。 日経平均33年ぶりの高値更新 日経平均株価は、5月29日の終値で3万1233円と、バブル景気の時期の1990年7月以来、およそ33年ぶりの高値を更新しました。 その後も連日で高値を更新し、先日6月16日までに10週続伸を記録しました。10週続伸はアベノミクス相場初期の2012年11月~13年1月(12週続伸)以来です。 以下のグラフは、過去10年間の日経平均の値動きを示しています。 出典:日経新聞スマートチャートプラス (https://www.nikkei.com/smartchart/?code=N101%2FT&timeframe=10y&interval=1Month&upperIndicators=sma&lowerIndicators=volume&eventsShow=1) この日経平均を引き上げている投資主体は海外投資家(外国人)です。3月5週目からの日本株の買い越し累計額は6兆円を上回り、今までのアベノミクスや郵政解散などの日経平均株価の上昇局面と比較しても、今回の株価の上昇は特異なものであると言えるでしょう。では海外投資家は日本株にどのような魅力を感じて日本株を買っているのでしょうか? その要因として、以下の理由が考えられます。 理由1:ファンダメンタルズ(経済の基礎的状況)が他先進国と比べて良い 日経平均株価が高騰している1つ目の理由は、米欧に比べて日本の景気が底堅いと見られていることです。 現在、日本の名目GDPは拡大を続けており、コロナ禍後の堅調な景気回復に物価の上昇が加わることで、 今後も日本の名目GDPは成長が見込まれています。通常、デフレ下では「実質」GDPが伸びていても、物価が下落することで「名目」GDPは伸びないことが多々あります。 さらに現在、足元での世界的なインフレにより、他の先進国が、物価高や金融引き締めで先行きが不透明になっています。 そのなか、成長を続けることができているということが、購入にいたる1つの要因になったと考えられます。 理由2:円安と輸出企業の業績向上 円安の進行は、海外で商品を売る日本の輸出企業にとって大きな追い風となっています。一体、なぜこれが起こるのでしょうか? 円安が進むと、輸出企業は外国で売った商品により得られたドルを、より多くの円に交換できる状況が生まれます。その結果、売上と利益が円ベースで見ると上昇するのです。 日本という国は、輸出に強く依存しています。トヨタ、ホンダ、ソニーなど、日本を代表する大企業の海外売上比率は非常に高く、それらの企業は円安の影響を大きく受けます。例えば、トヨタの場合、円安が1円進むと営業利益が約450億円増加すると言われています。 この事実からも見て取れるように、円安が進行すると、これらの企業の業績が向上します。業績向上はそのまま株価上昇につながり、日経平均株価の上昇に寄与することとなるのです。 理由3:東京証券取引所によるPBR低迷企業への要請 3つ目の理由として、3月末、東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)が低迷する上場企業に対して、改善策を開示・実行するよう要請したことが挙げられます。 PBRとは、「Price Book-value Ratio」の略で、株価が1株あたりの何倍まで買われているかをみる投資尺度です。 これにより株価が割安か割高かを判断することができます。 日本は現状、東証プライム市場全体の平均PBRは、1.3倍で、3倍の米国と比較するとかなり見劣りします。 さらに、日本では、主要500社のうち、4割越でPBRが1を下回っています。 PBRの低さは、企業の収益性または成長性が市場に評価されていないことを意味しています。 このことに対し東京証券取引所が1倍を下回る要因の分析、改善のための具体策の開示といった具体的かつ十分な対応を求めました。 このような東京証券取引所による要請を受け、「日本の低PBR企業の資本効率や収益性が改善する」という期待が広まり、海外投資家などから割安株への買いも入りました。 理由4:引き続き割安な日本株 現在、日本株のPER(1株あたりの純利益、またはEPS)は15倍台となり、一部で割安感が薄れているという見方が広がっています。 しかし、他国の株式市場と比較してみると、日本株は依然として割安という位置付けにあります。 なぜなら、イールドスプレッドという指標が、その理由を示しているからです。イールドスプレッドとは、株式の収益率と国債の利回りの差を示す指標で、 これによって株価が割高なのか割安なのかを判断することができます。具体的には、イールドスプレッドが大きければ株価は割安、小さければ割高であると言えます。 現在、米国では利上げが相次いでおり、3カ月物の国債とS&P500の株式収益率のイールドスプレッドは、2001年3月以降で初めて国債利回りが株式収益率を上回る状態になっています。 一方で、日本はマイナス金利政策の影響を受けており、3カ月物国債と日経平均の株式収益率のイールドスプレッドはあまり縮まっていません。 これが、日本株がまだ割安であると評価されている大きな理由となっています まとめ 今回は、過去数十年と比較した最近の日経平均株価の値動き、そしてその理由を4つ挙げて解説しました。 ニュース等で「日経平均が高値で推移している」ことをご存知だった方も、今回のブログをお読みいただくことで、 値上がりの背景には複数の要因があることを理解できたのではないでしょうか? 個別株式への投資だけでなく、資産運用全般において、まず国内や世界全体の経済動向を知ること、そしてその背景を理解することは特に重要です。 このブログが皆様の資産運用のためにも有意義な知識となれば幸いです。
2023.07.18
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株式投資の基本戦略(後編):営業利益の伸びを活用した銘柄選択の方法
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 今回も、株式投資における銘柄選択の詳細な手法について解説します。前回はポートフォリオ運用のプロセスと銘柄の選び方、調査方法についてお話ししましたが、 今回は特に銘柄選択の目的や営業利益の伸び率の見方について深掘りしていきます。 [目次] ・銘柄選択の目的 ・営業利益と株価上昇の関連性 ・営業利益の伸び率の見方 ・まとめ 銘柄選択の目的 銘柄選択の主な目的は、期待リターンがプラスの銘柄を見つけることです。期待リターンは、以下の式のとおり算出されます。 市場平均を上回る「アルファ(超過収益)」をもたらす銘柄に投資することは、株式投資における重要な戦略です。日経平均などの指標と比較し、アルファを持つ銘柄を選び出すことが、成功へのカギとなります。 このアルファをどうやって獲得するのかは、銘柄選択の重要なポイントとなります。株価の伸びが市場平均を超える銘柄をどのように見つけるか、それが問われることになります。 株価はEPS(一株あたり利益)とPER(株価収益率)という二つの要素から計算されます。利益を示すEPSや、その人気度を反映するPERのいずれか、またはその両方が伸びる銘柄を選択することで、アルファの獲得が期待できるのです。 営業利益の重要性 利益と人気、これら二つの重要な要素のうち、ここでは特に利益の伸びに焦点を当てて解説します。 EPS(Earnings Per Share)とは純利益を発行済み株式で割った値を指します。しかし、純利益は一時的な損益によって大きく変動することがあります。工場が自然災害により大打撃を受ける、子会社を売却して一時的に利益を得るなど、特別損失や特別利益が発生すると純利益に影響します。これらは企業の通常のビジネスとは直接関係のない利益や損失です。 したがって、企業の中長期的な成長を追い求め、分析する際には、純利益や経常利益ではなく、本業の実力を示す営業利益の伸びに注目すべきです。 営業利益の伸びが株価の上昇とどのように関連しているかを具体的に示す事例を紹介します。TOPIX2000銘柄を対象に、営業利益の伸びだけを基準にスクリーニングを行い、月次でリバランスするという戦略を用いてみました。この戦略では、常に上位10%に入る約200社の銘柄を選出し、それらに対して機械的に投資を続けてみます。その結果、過去10年間(2012年10月から2022年10月)の投資実績を見てみると、この戦略を採用した場合、投資元本が4倍以上に増加したことが確認できます。この事例から、営業利益の伸びが銘柄の株価上昇と直接的に関連していることが伺えます。 営業利益の伸び率の見方 営業利益の伸び率を判断するには、どのような要素に着目すれば良いのでしょうか? 以下の3つのステップに沿って考えましょう。 1.過去の業績が安定的に成長しているか 2.直近の業績が急速に伸びているか 3.将来の業績成長に明確な理由があるか まず1つ目のステップでは、過去3~5年間の営業利益の伸びを確認します。次に、直近の四半期の営業利益が前年同期の四半期に比べて大きく増加しているかを見ます。そして最後のステップでは、将来の業績成長に明確な理由があるかを確認します。この確認には、市場予測やアナリストによる評価などが役立つでしょう。 以上の過去・現在・未来という3つのステップを踏むことで、営業利益の伸びが期待できる銘柄を見極めることができます。 まとめ 銘柄選択の重要性とその具体的な手法についての理解を深めていただけたでしょうか?営業利益の伸びが株式投資における銘柄選択にどれほど重要であるか、その実例を通じてご覧いただいた通りです。 これから株式投資を始める方、銘柄選択について迷っている方は、まずは企業の営業利益に注目してみてください。
2023.07.08
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株式投資の基本戦略(前編):銘柄選びとポートフォリオ運用の秘訣
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 皆様は、「株式投資」についてどんなイメージを持つでしょうか? 「株式投資」と言えば、一攫千金のチャンスが飛び込んできて、短期間で株価が2倍、3倍になるような銘柄を探して投資するといったイメージを抱く方も多いのではないでしょうか? しかし、真剣に株式で運用し、特にポートフォリオを組んで運用する場合は、投資戦略や投資方針の決定、そして一連のプロセスを経て銘柄を選び、長期的な視点でポートフォリオを構築していきます。 今回と次回のブログでは、"株式投資における銘柄選択"の重要性とその方法について、わかりやすく解説いたします! [目次] ・ポートフォリオ運用の6つのプロセス ・銘柄の選び方と調査方法 ・まとめ ポートフォリオ運用のプロセス ポートフォリオを組んで株式投資を進めていく際、大きく6つのプロセスに分けられます。 それは、「投資哲学&運用ガイドラインの決定」、「投資ユニバースの設定」、 「スクリーニング」、「企業調査」、「ポートフォリオ構築」、「メンテナンス」です。 特定の株式に投資するための銘柄選択は、これらのプロセスの一部にすぎません。 投資哲学と運用ガイドライン:リスクとリターンのバランス まず、投資哲学と運用ガイドラインの決定が重要です。これはリスクとリターンをどの程度まで取りたいのかを考慮するプロセスです。急上昇する銘柄を選び、リスクを冒して利益を出したいのか。それとも、株価が横ばいでも安定した配当を求めるのか。これは投資に対する個々の価値観や考え方に大きく依存します。 投資ユニバースの設定:対象となる銘柄群 次に、「銘柄選択」の一環として、どの投資企業群(投資ユニバース)を対象とするかを設定します。日本株ならTOPIX(東証株価指数)、米国株ならNASDAQ(全米証券業協会が運営する株式市場)などが考えられます。 スクリーニング:効率的な投資対象の選定 次のステップは、「ポートフォリオ運用」の一部としてスクリーニングを行うことです。これは、設定した投資ユニバースから効率よく投資対象となる銘柄を絞り込むプロセスです。PER(株価収益率)が20倍以下の銘柄のみを選び出すという手法が一例です。 企業調査:個別銘柄の深掘り スクリーニングにより選定された銘柄から、最終的に数十~百程度の銘柄に絞り込み、それぞれの企業調査を始めます。 ポートフォリオ構築:投資の組み合わせ 企業調査をもとにした銘柄選択後は、それらをどのような配分で組み合わせるか、つまりポートフォリオを構築します。これは、どの銘柄に何の割合で投資するかを決定する重要なステップです。 ポートフォリオメンテナンス:持続的な市場動向の観察 株式の購入後も、その企業の動向を持続的にウォッチし、適宜売却や追加購入といった決定をしていきます。投資は一回限りの行為ではなく、絶えず市場を監視し、調整を行う継続的なプロセスであることを理解することが重要です。 この一連のプロセスを見ていただくと、「株式投資」における「ポートフォリオ運用」は、個別銘柄の分析が重要な要素ではありますが、それ以外にも多くの過程を経る必要があることがおわかりいただけたかと思います。「銘柄選択」だけにとらわれすぎず、全体のプロセスを理解しながら賢く投資を行うことが重要です。 WRAPという投資一任サービスにより、相場に合わせて安定的に複利運用をしていくというご提案に至りました。お客様には、非常にご納得頂いてご運用を始めて頂くことができました。 銘柄の選び方、調べ方 6つのプロセスのうち前半の「投資哲学&運用ガイドラインの決定」、「投資ユニバースの設定」、 「スクリーニング」においては、自分がどんな種類の株式に投資をしたいのかを考える必要があります。 当然ながら、株式銘柄は一つ一つが異なるビジネスモデルを持ち、それぞれリターンやリスクも異なります。この点を踏まえて、次のように株式を分類することができます。 「バリュー株」、「グロース株」という言葉は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?バリュー株とは、企業の基礎的な価値に対して株価が割安と見られる銘柄であり、一般的にリスクが低く、予想リターンもそれほど高くないとされます。一方、グロース株は企業の収益が高速に成長していると期待され、高リスク・高リターンの特性を持つことが多いです。さらに、企業の規模や配当性向に基づいた分類法も存在し、大型から中小型株、高配当株、低ボラティリティ銘柄など、投資選択肢は多岐にわたります。 選ぶ銘柄は、個々の投資戦略や哲学、設定した投資ユニバースによって大きく変わります。したがって、個々の銘柄を選択する前に、自身の投資スタイルを理解し、投資ユニバースに存在する株式のタイプを調査することが重要です。 まとめ 今回は、株式投資におけるポートフォリオ運用のプロセスと銘柄の選択・調査方法について説明しました。株式投資では、"どの銘柄を投資先とするか"に注目することが多いですが、ここで説明したプロセスによって銘柄を選定していくステップが、実は重要なのです。次回も引き続き、株式投資における銘柄選択の重要性とその方法について、詳細に解説します。
2023.06.29
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お客様の声:退職金の運用とは?弊社の3つの実際の運用事例をご紹介
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 今回は、前回に引き続き、弊社をご利用いただいているお客様3名の実際の例をご紹介していきたいと思います。 前回は債券に関連した事例でしたが、今回ご紹介するお客様はいずれも、退職金による運用を弊社からご提案させていただいた事例となっています。 [目次] ・お客様事例①:そもそもいくら運用したらいいの? ・お客様事例②:退職金の受け取り方ってどうしたらいいの? ・お客様事例③:安定した運用をするには? ・最後に お客様事例①:そもそもいくら運用したらいいの? プロフィール 60代前半・男性 ご職業:会社勤めの後、退職済み 家族構成:奥様、お子様2人 保有資産:5,000万円 年収:なし お悩み ・受け取った退職金を何かで運用したい ・今まで運用経験があまりなく、運用に抵抗がある ・まとまった資金があるが、いくらから運用を始めればいいのかわからない ・将来どれくらい資産が足りなくなるのかわからない こちらのお客様は、すでにご退職金を受け取られており、老後の資産形成のため何かに運用したいとお考えの方でした。しかし老後の生活にあたり、今ある資産のうちどれくらいの金額を運用するべきなのかがわからず、なかなか運用を始めるところまで踏み切れていませんでした。 今まで本格的に資産運用というものに触れておらず、経験のある運用は「つみたてNISA」、会社の「確定拠出年金」のみで、株の購入や余剰資金から投資信託をするなどの経験がなく、まとまったお金を一度に運用に回すことには抵抗があり、どれくらいを運用に回す必要があるのかがわからないというお悩みをお持ちでした。 こちらの事例では、お客様個人の“キャッシュフローシミュレーション”をお作りしました。 こちらは、今後想定される収入・支出や今お持ちの金融資産を元に、お客様の資産が今後どうなっていくかをシミュレーションしたもので、何も運用しなかった場合と運用した場合の数字を比較できます。 ご資産が何歳くらいまで持つのか、何歳時点でまとまったご資金が必要になるかがわかるため、どれくらいのご資金での運用をしていくかを考える一つの目安になります。 実際にシミュレーションをお作りすると、90歳時点で資産が足りなくなること、4000万円で運用を始めた場合は資産寿命を97歳まで伸ばすことができるとの結果が出ました。また、過度にリスクをとる必要がないことも分かり、3000万円を債券でリスクを抑え安定的な利金収入を得て頂き、残りをJAM WRAPという投資一任サービスにより、相場に合わせて安定的に複利運用をしていくというご提案に至りました。お客様には、非常にご納得頂いてご運用を始めて頂くことができました。 お客様事例②:退職金の受け取り方ってどうしたらいいの? プロフィール 50代後半・男性 ご職業:会社員 ご家族構成:奥様、お子様1人 保有資産:3,000万円 ご年収:1,000万円 お悩み ・退職金をどう受け取るのがよいのかわからない ・受け取り方の違いによってどのような違いがあるかわからない ・住宅ローンもあるが、退職金で一括返済した方がいいのか こちらのお客様は、退職を1年後に控えその受け取り方に悩まれている方でした。会社から受け取り方の選択肢は示されているが、税金やライフプランなどを考えた上で自分にとって一番いい受け取り方はどれなのか、というご相談を頂きました。 退職金の受け取り方は様々なパターンがあり、それによって控除が適用されたり、公的年金やその他の所得と合算で税金の計算があったりと、かなり複雑な仕組みになっています。 こちらのお客様には、各受け取り方による税金のシミュレーションを作成しました。こちらは、勤続年数や、今後の収入などをお伺いし、控除などを踏まえて弊社のシステムで概算が算出されます。 あくまでシミュレーションではありますが、どの受け取り方で、どれだけ税金が違ってくるのかということがわかります。どの受け取り方がベストなのかという判断の目安になります。 こちらのお客様の場合、一括で受け取った方がトータルでお支払頂く税金が少ないことがわかりました。また、一括で受け取った資金を運用に回すことで、投資元本が増え、支払った税金以上の運用益が得られるメリットもあります。住宅ローンの支払いについてのご相談も同時に頂いていたので、最終的に受け取る合計金額を増やすために、支払う金利以上の利回りで運用していくご提案をさせて頂きました。債券では毎年決まった利率での運用が可能であるため、具体的な商品の例としてご案内しました。 実際にお客様からは、「一括受け取りがいいね」「自分でいろんなパターンをシミュレーションするのは大変だったから、すごく助かったよ」とお言葉を頂きました。 お客様事例③:安定した運用をするには? プロフィール 50代後半・男性 ご職業:会社役員 ご家族構成:お子様2人 保有資産:5,000万円 年収:1,500万円 お悩み ・今の運用ポートフォリオを見直したい ・給与所得がなくなるため、ポートフォリオのリスクを抑えたい ・運用パフォーマンスの変動が大きく、精神的負担が大きいのでどうにかしたい こちらのお客様は、これまでご自身で運用を積極的にされていて、退職のタイミングで運用のポートフォリオを見直したいとご相談をいただきました。現状の運用ポートフォリオは個別の日本株や米国株の投資信託がほとんどでした。退職し給与所得が無くなった後に向け、徐々に変動が少なくリスクの低いものにしていきたいというご要望でした。 こちらのお客様には、今お持ちのポートフォリオの分析をさせて頂き、よりリスクを抑えたポートフォリオのご提案をさせていただきました。現在のポートフォリオが年間にどれだけ変動しているか、リスクに対してどれだけ効率よくリターンを出せているかを数値化することで、より自分のポートフォリオが自分の投資意向に合っているかを確かめることができます。 こちらのお客様はリスクを今の半分くらいにしたいということで、ご運用資産の一部に、できるだけ値動きの少ない「債券」を組み入れるご提案をさせていただきました。それにより、ポートフォリオの変動を抑え、より安定的に運用できるだけでなく、入ってきた利金を生活費に当てることもできるため、大変喜んでいただきました。 日本で運用というと株や投資信託での運用が一般的ですが、世の中には様々な金融商品があります。運用のポートフォリオはご年齢に応じて、徐々にリスクや変動幅の小さいものへとリバランスしていく必要があります。特にご退職後は収入の柱が一つ減り、なかなか運用でのリスクをとりづらくなるため、「ただお金を増やす運用」から、「お金を使いながら増やす運用」に変えていく必要があります。そのため、ご自身のライフプランに合ったポートフォリオの見直しは必須です。 最後に 今回は、退職金による資産運用をご提案させていただいたお客様の事例を3つご紹介致しました。 どの事例も退職金を活用するためのご提案ですが、それぞれのお客様の状況やご希望によって様々な運用方法があることがお分かりいただけたのではないかと思います。このような具体的な事例を知っていただくことで、少しでも実際の運用へのご興味をもっていただくきっかけになれば幸いです。 今回ご紹介した事例以外にも、弊社ではお客様のニーズに合わせた資産運用の仕方をご提案させていただいております。ご質問や疑問点のある方も、是非お気軽にご相談ください。
2023.06.16
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お客様の声:債券投資で実現した3つの資産運用戦略
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 今回は、弊社をご利用いただいている3名のお客様の実際の例をご紹介していきたいと思います。 今回ご紹介するお客様はいずれも、債券による運用を弊社からご提案させていただいた事例となっています。 [目次] ・お客様事例①:早期退職後に安定的なインカムゲインを取れるような運用がしたい ・お客様事例②:毎年決まった利益を取れる運用がしたい ・お客様事例③:リスクを抑えた運用をしつつ、相続のための手元資金を増やしたい ・最後に お客様事例①:早期退職後に安定的なインカムゲインを取れるような運用がしたい プロフィール 40代後半、男性 ご職業:公務員 家族構成:奥様、お子様2人 保有資産:株5000万円、不動産、現金5000万円 お悩み ・早期退職したい ・早期退職後のために、ある程度インカムゲインを取れるように債券運用がしたい ・色々な債券を見て選択肢を増やしたい こちらのお客様は、公務員として働きながら早期退職をお考えの方でした。運用は株式が5000万円と不動産でのご運用でした。 早期退職すると給与収入がなくなるため、安定的にインカムゲインを得ることができるような運用をしたいというご意向でした。 ご相談時点ではインカムゲインを得るための運用は不動産のみでしたが、一部債券の運用も視野に入れ、インターネットでご自身でもご覧になっていました。 ただ、インターネットでは見られる銘柄数に限りがあるため、より多くの種類を見たいというご希望でした。 こちらのお客様には、様々なパターンの債券をご提案させていただきました。弊社を通して債券をお買付け頂くことで、 より幅広い種類の債券の中からお選びいただけるようになっています。通常個人がネット証券で閲覧できる債券の銘柄は非常に少なく、 また対面証券さんでも実際にご提案される銘柄数はあまり多くありません。しかしマーケットには数百本・数千本の債券が出回っており、 弊社では証券会社を通じて様々な債券を市場から調達することができます。 「償還期限は○年くらい」「格付けは○○円以上がいい」「年間○○円くらいの収入が欲しい」など、 具体的なご希望にも合わせたご提案が可能です。実際にこちらのお客様にも「こんなに種類があるとは知らなかった!」と喜んでいただきました。 お客様事例②:毎年決まった利益を取れる運用がしたい プロフィール 60代後半、男性 ご職業:元上場企業社長 家族構成:奥様、お子様3人 保有資産:30億円 お悩み ・毎年決まった利金を取れるような運用がしたい ・法人口座で運用したい ・リスクを抑えて運用したい こちらのお客様は、リスクを抑えつつ毎年決まった利金を取れるような運用がしたいとのことで、債券にご興味を持っていらっしゃる方でした。 現在ご自身の資産管理会社で運用をしており、債券は少額でご購入された経験があり、他にいい債券があるのかを知りたいというご要望でした。 運用としては、投資信託の積立を7000万円程していらっしゃいました。 こちらのお客様には、クーポンが高く満期の長い債券をご紹介いたしました。クーポンが高い物であれば毎年受け取れる利金は多くなり、 さらに長期の債券であれば債券単価の値上がりも期待できます。債券単価は金利と逆相関の動きをとりますので、金利が高い水準で推移しており、 今後金利の低下が予想できるタイミングでは、債券単価が上昇する可能性が高いです。長期の債券はより債券単価の変動が大きくなりますので、 より大きな値上がりを狙うことができます。リスクを抑えてインカムゲインをとりつつ、 キャピタルゲインも期待できるということで、非常にご納得頂いてお買付け頂きました。 お客様事例③:リスクを抑えた運用をしつつ、相続のための手元資金を増やしたい プロフィール 50代後半、女性 ご職業:主婦 ご家族構成:旦那様、お子様2人 保有資産:金融商品7000万円、不動産、土地等 お悩み ・これまで株式で大きく損をしてきたので、リスクを抑えた運用がしたい ・子供世代が相続を受けるときの、手元資金を作っておきたい こちらのお客様は、40年近くご自身で運用をしていらっしゃる方でした。現在お持ちの金融商品は、 株式、ファンドラップ、投資信託をあわせて7000万円でした。これまで株式で大きな損失があったため、 株式よりもリスクを抑えた運用がしたいというご要望でした。また、ご両親の相続の際に相続税の対策をしておらず苦労された経験から、 ご自身の相続のことも考慮しながら運用をしたいと仰っていました。 そこで、新たに債券のご提案をさせて頂きました。債券であれば、満期にはほとんどの場合額面で返ってくるため、 景気に左右されにくいリスクの抑えた運用ができます。また相続に関しても、値動きの大きい商品は、相続のタイミングで大きなマーケットクラッシュが発生すると、 資産が大きく目減りしてしまう可能性があります。その点債券は変動が小さく満期が決まっているため、「減らさない運用」に適した商品であるといえます。 また、この方は入ってきた利金をすぐに使う予定がなかったため、株式のETFに再投資させて頂くご提案もさせて頂きました。 株式のETFは、個別株式と同じように値動きは大きいですが、債券で得られた利益で、心理的な負担は大きく減らすことができます。 このように資産の大きな部分を債券で、余剰資金でリスクの高い株式で運用することで、リスクを抑えながら効率よく運用ができます。 最後に 今回は、債券による資産運用をご提案させていただいたお客様の事例を3つご紹介致しました。 このような具体的な事例を知っていただくことで、少しでも実際の運用へのご興味をもっていただくきっかけになれば幸いです。 今回ご紹介した事例以外にも、弊社ではお客様のニーズに合わせた資産運用の仕方をご提案させていただいております。ご質問や疑問点のある方も、是非お気軽にご相談ください。
2023.06.10
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AT1債とは何か?(後編):債券の種類、バーゼル規制、弁済順位の詳細を解説
皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! 前回は、AT1債が注目を集めるきっかけとなった、UBSグループによるクレディ・スイス・グループの買収の背景と詳しい条件の内容、そして買収に際して決定されたクレディ・スイスの多額のAT1債の無価値化について解説しました。 今回は、前回に引き続き、「AT1債とは何か」について他の種類の債券や資本と比較しながら、わかりやすく解説いたします。 [目次] ・社債の種類 ・バーゼル規制とは ・企業の負債の弁済順位 ・まとめ 社債の種類 AT1債とは何かを理解するために、まずは社債(企業が投資家からの資金調達を目的として発行する債券)の種類について見ていきましょう。 債券とは、会社のバランスシートにおいて負債にあたる部分であり、返さなければならないものです。そのため債券は会社の資本ではありません。反対に、株式を発行して集めたお金は、返済の必要がない会社の資本になります。 ただし、図に記載のとおり、社債の中でも劣後債は資本性を有していることが重要なポイントです。 シニア債と呼ばれる普通社債は、融資の次に弁済順位が高く、比較的安全性の高い商品と言えます。一方、劣後債は普通社債に比べて法的弁済順位が低く設定されているため、発行体が経営破綻した際には一部または全部の返済が行われない可能性があります。 そして一番下にあるCoCo債は返済順位が最も低い債券となっています。 CoCo債は、Contingent Convertible Bondsのことで、日本語では偶発転換社債と呼ばれます。CoCo債は主に金融機関から発行される債券ですが、発行体である金融機関の自己資本比率があらかじめ定められた一定の水準を下回った場合、元本の一部または全てが削減される、もしくは強制的に株式に転換される性質を持っています 今回のクレディ・スイスの買収で無価値になったAT1債はCoCo債にあたります。 バーゼル規制とは CoCo債が金融機関によって発行されている理由を理解するためには、まずはバーゼル規制について把握する必要があります。 バーゼル規制とは、銀行がリスクに対処するために必要な最低限の資本を確保することを要求する国際的な基準です。この規制により、銀行は潜在的なリスクに備えるために自己資本と準備資産を持つ必要があります。 特にリーマンショック以降、金融機関の安全性を高めるためにこの規制は強化されてきました。 その基準はいくつかあり、Tier1は「生きるための資本」、Tier2 は「安全に破綻するための資本」と言われています。 Tier1には、株式から調達された資本などが含まれ、Tier2には劣後債などが含まれます。 そしてTier1とTier2の間の、「その他のTier1」部分にCoCo債が当てはまります。 「その他のTier1」、つまり「Additional Tier1」を略して「AT1」と呼ばれているのです。 今回の買収では、クレディ・スイスのAT1債約2.2兆円が無価値となりました。 無価値になった背景としては、政府主導で買収する風評被害が及ぶことをUBSの株主が納得しないということもあり、クレディ・スイスのAT1債を保有する投資家にも責任を求めた結果、無価値にする判断となりました。 しかし、今回の決定が異例と呼ばれている理由は、クレディ・スイスの株式投資家にはUBSの株式を一定程度割り当てることが決定したからです。 企業の負債の弁済順位 企業のバランスシートの中でCoCo債と株式を比較してみましょう。 前述のとおり、企業の負債の中で弁済順位が最も高いのはシニア債、そして弁済順位が最も低いのは資本である株式です。バランスシート上、株主から集めた資金は資本となります。そのため、株式は本来、CoCo債よりも弁済順位が低いはずです。 にもかかわらず、今回のクレディ・スイスの買収では、株式の価値は担保されたままCoCo債のみが無価値になってしまうという決定となり、AT1債を保有する投資家が不公平ではないかと訴えているのが今の状況です。 しかし、バーゼル規制と今回のAT1債の条項を詳しく見ると、今回のように株式よりもAT1債の方が損失を被る可能性があることは事前に分かっていたことです。 債券とは、お金を貸して満期にはお金が返ってくるという仕組みの商品ですが、CoCo債や劣後債に関しては、財務状態によって価値がなくなってしまう可能性があるのです。欧州ではこのCoCo債が約36兆円以上発行されているため、動揺が広がり、大きなニュースになっています。 まとめ いかがでしたでしょうか? 今回は、AT1債を含むCoCo債がどのような特徴を持つ債券なのかについて、他の種類の負債と比較しながらご紹介しました。 債券投資をする際には、その債券が発行される時にどのような条件がついているのかを詳しく確認することが重要です。また、債券の種類に関しても、単に利回りが高いからという理由だけで劣後債やCoCo債を選ぶのではなく、本当に利回りが高い分許容できるリスクなのかをしっかりと確認し、判断する必要があります。 債券運用は、事前に条件や仕組みを理解し、正しい知識を身につけてから進めていきましょう。
2023.06.02
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AT1債とは何か?(前半):UBSグループのクレディ・スイス買収とその影響について
皆様こんにちは。株式会社 Japan Asset Managementです! さて、皆様は「AT1債(エーティーワンさい)」をご存知でしょうか。 最近、スイス金融最大手のUBSグループが同2位のクレディ・スイス・グループを買収することが決定し、この買収に関連してAT1債が注目を集めるようになりました。\ 今回と次回のブログでは、この「AT1債とは何か」を2回にわたって、わかりやすく解説していきます。 [目次] ・なぜAT1債が注目されているのか? ・どのような条件でクレディ・スイスの買収が行われたのか? ・まとめ なぜAT1債が注目されているのか? AT1債が注目を集める最大の要因となったのは、2023年3月19日、前述のUBSグループによるクレディ・スイス・グループの買収が決定し、その買収に際して多額のAT1債の無価値化(全額減損)が発表されたことです。 近年、クレディ・スイスの周りではネガティブなニュースが続いており、買収に至った大きな要因は3つ挙げられます。 1つ目はグリーンシル・キャピタルの破綻です。英国の金融サービス会社グリーンシル・キャピタルは、サプライチェーンファイナンスの専門家であり、同社は顧客が発行する債券のリスクを引き受けることで利益を上げていましたが、これらの債券の信用リスクを適切に評価することができず2021年に破綻することになりました。 クレディ・スイスは2017年以来、同社に向けて4つのファンドを立ち上げ、合計で100億ドルを投資していました。損失額は当初約2億ドルほどでしたが、後に最大で約30億ドル(約3500億円)まで達していることが明らかになりました。この損失はクレディ・スイスの業績にも大きな影響を与え、銀行株価にも悪影響を及ぼしました。 2つ目は、アルケゴス・キャピタルの破綻です。2021年初頭、ファミリーオフィス(裕福な家族の投資管理と資産管理を扱う非公開会社)のアルケゴス・キャピタルが破綻し、話題になりました。大量の取引を短期間で行うアルケゴス・キャピタルに対して、クレディ・スイスは過剰な信用をおいて大きな投資をしており、アルケゴス・キャピタルの破綻によって損失額50億ドル(約5500億円)にも及ぶ大きな影響を受けました。 3つ目は、2022年10月から12月にかけてのSNS騒動や3月のシリコンバレー銀行の破綻に伴う急激な顧客資金流出です。クレディ・スイスによると2022年11月にはウェルスマネジメント部門で約840スイスフラン、日本円で約12兆円が流出し、四半期全体では1105億スイスフラン(約16兆円)が流出したと言われています。 以上の3つの出来事が原因となり、クレディ・スイスは破綻寸前まで追い込まれ、その救済策としてUBSグループによる買収が決定しました。買収は、スイス政府の介入もありましたが、UBS側としては十分な資産査定を行う時間がないままに買収を決めなければならず、かなり買収には慎重であったとみられています。UBSを説得するために政府や当局による様々な救済措置が行われ、買収が実施されました。 どのような条件でクレディ・スイスの買収が行われたのか? まず1つ目に、今回の買収の方法は、30億スイスフラン(約4300億円)規模の株式交換によるものです。クレディ・スイスの株式の時価総額は3月17日の終値時点で約74億スイスフランであったことを考えると買収額は半分以下の金額になりますので、かなり破格であることが伺えます。 2つ目の条件として、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行が1,000億スイスフラン(約14兆円)の流動性支援をUBSに対して行うことが決まりました。 3つ目の条件として、UBSが買収する資産から生じ得る損失を吸収するために、スイス政府が90億スイスフラン(約1.3兆円)の保証をUBSに提供しました。 4つ目の条件は、160億フラン(約2.2兆円)のAT1債が無価値となったことです。 これは極めて異例な条件となっており、今回の処置で最も注目されています。これにより、投資家が多額のコストを負担することになったため、大きな波紋が広がっています。 まとめ いかがでしたでしょうか? 今回は、AT1債が注目されるきっかけとなったクレディ・スイスの買収について、その背景と実際の条件を解説しました。 次回も引き続き、AT1債について解説をしていきたいと思います。 このブログが、債券をはじめとした金融商品の仕組みを理解するための一助となれば幸いです。 次回もお楽しみに!
2023.05.26
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大きな影響力を持つアクティビスト、コスモエネルギーホールディングスの事例をご紹介
皆様お久しぶりです。 株式会社 Japan Asset Managementです! 皆様は「村上ファンド」をご存知でしょうか? 村上ファンドとは、元通商産業省官僚の村上世彰氏らが率いた投資ファンドの総称で、「もの言う株主(アクティビスト)」として有名になりました 一定数以上の株式を保有し、投資先企業の経営者に対して経営戦略などを提案することで、その価値を高めて最終的に利益を得ようとするのがアクティビストであり、経営者が気に入らなければ株式の売却という手段でもの言わず退出する株主とは対照的です。 現在、旧村上ファンドは様々な法人名に変わって活動を続けており、そのうちの一つが村上氏傘下のシティインデックスイレブンス(以下、シティ)です。今回は、シティの主要投資先であるコスモエネルギーホールディングス株式会社(以下、コスモ)を紹介します。シティなどの旧村上ファンド以外にも国内外のアクティビストたちが今、コスモに注目しています [目次] ・コスモエネルギーHDが注目されている理由 ・コスモエネルギーHDとシティの現況 コスモエネルギーHDが注目されている理由 旧村上ファンドは、まず累損(企業会計における期間純損失の累積額)が50億以上あるような赤字企業の株式を購入し、経営改善の提案など、株主価値の向上のためにその企業に対してアクティビズムを国内で展開し、最終的に累損とぶつけて無税でキャピタルゲインを得るといった特徴的な手法を使います。 シティなどが提出している大量保有報告書・変更報告書から判明している、村上世彰氏の主要投資先8社をポートフォリオとして見立てると、コスモが最大の投資先であることが分かります。村上氏がここまで大きなポジションを取った銘柄は過去にありません。 コスモエネルギーHDとシティの現況 2022年4月5日、シティが5.2%の株式を取得し、大量保有報告書を提出したことが、今回コスモが注目されるきっかけになりました(*5%以上株式を取得すると、大量保有報告を1週間以内に提出しなければならない) 2023年1月11日 コスモ側の20%以上の株式の取得は控えてほしいという要請に対して、シティは30%までの買い増しをおこなう意向を示しました。これに対してコスモは買収防衛策の導入を発表しました。 その後、シティは再生可能エネルギー事業の分社化(スピンオフ)と上場を提案しましたが、コスモはその議論・検討を拒否しました。同年3月23日、コスモは新たな中期経営計画で総還元性向(企業が株主に対して還元する利益の割合)を60%以上にすると発表しました。シティが株主還元を求める中、現行の50%からの引き上げとなりました。 そして4月20日、シティは再生可能エネルギー事業の上場の議論・検討を拒否されたことから、その議論を進めることを公約として掲げる社外取締役1名の選任を要求する株主提案をおこないました。 旧村上ファンドによる直近5件ほどの活動事例から、村上氏は業績の悪い企業を立て直すという公明正大な目標を誇示しながらも、結局は自らの持分をプレミアム価格で購入しているだけではないかという世論の傾きも出て来ていました。 しかし今回は、村上氏の指定する社外取締役の投入によってコスモの企業戦略を徐々に変えていこうという、長期での企業改革に取り組んでいるのではないかとの推察もできます。 まとめ いかがでしたでしょうか? 今回は、コスモエネルギーホールディングスが注目を集めている理由について解説しました。 次回の株主総会でシティの株主提案(社外取締役の選出)が承認された場合、シティが社外取締役を通じてどのような内部アクションを起こして企業変革を進めていくかに注目が集まります。 今回取りあげた旧村上ファンドをはじめとするアクティビストと投資先企業の動向を追うことで、会社法や株主の分析などに生かすことができます。 この記事が、皆様の資産運用や企業分析のお役に立てば幸いです。
2023.05.19
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オルタナティブデータとは何か、わかりやすく解説!
- オルタナティブデータで生まれる、新しい資産運用のかたち - 皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです! さて、皆様は「オルタナティブデータ」をご存知でしょうか。 企業の財務情報や国内外の経済指標などの様々なデータは、投資判断を行う上で非常に重要です。 近年、急速にAIなど情報技術の発展が進む中で、本タイトルにもある「オルタナティブデータ」に注目が集まっています。オルタナティブデータとは、一体どのような「データ」なのでしょうか? 今回はこの「オルタナティブデータとは何か」わかりやすく解説していきます! 【目次】 ##### オルタナティブデータとは ##### なぜオルタナティブデータが注目されているのか ##### オルタナティブデータの活用例 ##### オルタナティブデータ活用のメリット・デメリット ##### まとめ オルタナティブデータとは ---------------- これまで活用されてこなかった代替的(=alternative)なデータ全般のことをオルタナティブデータ(Alternative Data)と呼びます。 オルタナティブデータの代表例には、「クレジットカードデータ」や「POSデータ※[1]」「衛生情報」などが挙げられます。 一方、従来投資判断に使われてきたデータのことをトラディショナルデータ(Traditional Data)と呼びます。 トラディショナルデータの代表例は、「経済統計(GDP、国勢調査、商業統計など)」や「企業の決算情報」などが挙げられ、インターネット上などで一般開示されていることが多く、比較的簡単に誰でも手に入れやすいです。 また、経済統計は調査・集計されてから発表されるのに数ヶ月かかる傾向にあるため、情報の速報性が課題です。 ============================================ ※[1] POSデータ…Point Of Salesの略で、レジで商品が販売された際に記録され、どの商品がどの時間に、どの場所で、いくらでどのくらい売れたのかを見ることができます。 なぜオルタナティブデータが注目されているのか -------------------------- 世界でオルタナティブデータへの関心は急速に高まっています。 図1は、オルタナティブデータプロバイダ(データを提供する企業)数の1990年〜2018年の推移を表しています。プロバイダ数は年々急激に増加し、オルタナティブデータ市場は年々拡大していることが見て取れます。 なぜオルタナティブデータが注目されているのでしょうか。 図 1出所:Alternativedata.orgより画像引用(世界におけるオルタナティブデータを提供するデータプロバイダは、年々増加していることがわかる。) インターネットが大衆化される前の21世紀以前、企業の財務情報など投資判断に用いられるデータは誰でも検索して入手できるものではありませんでした。 証券会社や機関投資家などの一部の企業のみそれらのデータを事前に収集・分析することができたため、現在トラディショナルデータと言われる情報でさえ当時は情報価値が高い時代でした。 ** 2000年以後、企業の財務諸表や政府の統計情報といった開示情報は、インターネットで検索するだけで、誰もが簡単に入手できるようになりました。その結果、今までのトラディショナルデータだけでは優位性が減少し、アルファ(市場全体の騰落率より上回った収益のことを指す。銘柄の選択や売買のタイミング、銘柄を保有する数量などによって超過した収益を狙う。)を生み出すために必要な情報が取りづらくなったのです。** 多くの投資家が同じ情報を持っていれば、他の投資家と差別化できる投資をすることができません。そこで、今まで活用されてこなかった、位置情報やクレジットカードデータなどを用いて、投資判断に活用できるアルファ情報を得ようという動きが始まりました。 オルタナティブデータの活用によって正確で速い投資判断や投資戦略の差別化につながるという期待感から、注目を浴びるようになったのです。 図 2 出所:Alternativedata.orgより画像引用 (世界のオルタナティブデータの市場規模は年々成長し、現在は約1,700億円以上。) オルタナティブデータの活用例 ------------------ それでは、オルタナティブデータの実際の活用例をみてみましょう。 【実例1】 携帯電話の位置情報でテスラの株価上昇の予想 米国のオルタナティブデータプロバイダのTHASOS(タソス)社は、携帯電話の位置情報を用いて、自動車メーカーであるテスラの工場に、どのくらいの工場作業員が工場に留まっているのかを観測しました。通常工場に作業員が多ければ多いほど、生産量が増加していることを意味し、売上が上がっていると予想することができます。 このように、THASOS(タソス)社は位置情報というオルタナティブデータを用いて、テスラの株価が上がる時期を予想することができたのです。 出所:Tesla, Inc.より画像引用 【実例2】 衛星画像で、より正確な原油投資の判断ができるように 衛星画像分析を行っている米国スタートアップ企業のOrbital Insight(オービタルインサイト)社は、サウジアラビアの原油タンクを衛星画像で分析した結果、サウジアラビアの実際の石油貯蔵量を把握することができました。 その結果、サウジアラビアの公表する石油貯蔵量と、実際の貯蔵量に差があることが判明したのです。衛星画像というオルタナティブデータの活用により、正確な原油への投資判断が可能になりました。 出所:Orbital Insightより画像引用 オルタナティブデータ活用のメリット・デメリット --------------------------- 世界で注目を集めているオルタナティブデータを活用するメリットとデメリットは何でしょうか。 ここまでの話のまとめとしてメリットを整理し、オルタナティブデータの抱えるデメリットについて解説します。 *◎メリット * 投資判断がさらに正確に、スピーディーに出来る オルタナティブデータは、位置情報など、現時点のデータをすぐに入手しやすいため、トラディショナルデータと比べてリアルな情報を素早く得ることができます。 投資戦略の差別化が図れる トラディショナルデータと異なり、限られた人だけがデータを入手できます。従って、他の投資家よりも、投資判断に有益なデータをもとに投資戦略を図ることにつながります。 △デメリット オルタナティブデータプロバイダのサービス利用料金がかかる オルタナティブデータの活用例でも述べた、THSOS(タソス)やOrbital Insight(オービタルインサイト)のように、オルタナティブデータプロバイダを利用する場合、そのサービス利用料金がかかってしまいます。 一からオルタナティブデータの収集・分析チームを導入するには、莫大な人材・データ購入コストがかかる オルタナティブデータの収集や分析をするためには、データを解析する専門性やプログラミングの高い技術力が必要です。専門性や技術力が高いため、伴って人件費も高くなります。エンジニアなどの人件費を含めた維持費だけでも年間8000万円から1億円ほどかかると言われています。また、外部から位置情報や衛星画像などのデータを購入する場合、データ購入費用も必要です。データセットあたり数百万円から数億円※2と言われており、非常に高額な費用です。 リソースコストが高いことから、個人投資家がオルタナティブデータを活用するには、ハードルが少し高いでしょう。 個人情報などの情報取り扱いリスクに注意が必要 クレジットカード利用データなど、オルタナティブデータの性質上、個人を特定出来るデータが含まれていないか、またデータそのものに法的な問題がないかを、データ購入時や自らデータ収集を行う際に注意を払う必要があります。また、データプロバイダ側とデータ内容の確認や交渉を行うことで、データ購入プロセスに長期化する可能性もあります。 以上のように、オルタナティブデータを活用するメリットは、他の投資家よりも有利に投資判断を行うことができる点です。一方で、オルタナティブデータの導入コストは高く、費用対効果が十分であると言いづらい場合があることが挙げられます。そして、個人情報などが含まれるデータを扱う場合も多いため、オルタナティブデータを扱う際には、個人情報保護のリスクには細心の注意が必要です。 また、オルタナティブデータに注目が集まることは、トラディショナルデータと同様な価値となりかねません。今後より多くの投資家がオルタナティブデータを得られるようになれば、オルタナティブデータの価値も下がる傾向にあるでしょう。 ※2 出所:伊藤健(野村證券金融工学研究センター),佐藤工大(野村総合研究所)「資産運用におけるオルタナティブ・データ活用の可能性と課題」,pp.147 まとめ --- いかがでしたでしょうか? 今回はオルタナティブデータについて簡単に解説しました。 オルタナティブデータは、米国や中国を中心に活用が進む中、日本では利用料の高さなどを背景に、個人投資家や日本の運用会社への普及はあまり進んでいません。日本でも徐々に認知が広がり関心度が高まる中「オルタナティブデータを個人利用したい」という要望は増加しています。 株式会社handsは、5月より個人投資家向けにオルタナティブデータの提供を開始しています。 無料で1銘柄のオルタナティブデータが閲覧可能です(2022年5月12日時点)ので、オルタナティブデータに触れてみたいという方におすすめですので、ぜひご利用くださいませ。 https://alt-data.peragaru.net/ 本記事の引用元:https://peragaru.net/6511/
2022.05.16
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イベントレポートVol.3「お金の価値や金利、株価が動く仕組みを学び金融リテラシー向上を目指す」
JAM × 清水ヶ丘高等学校 & 呉青山中学・高等学校 皆様お久しぶりです!Japan Asset Managementです。 今回は、2022年03月22日に開催いたしました金融教育事業「JAMアカデミー」のイベント内容についてご紹介していきます! ※過去に開催したJAMアカデミーの様子:(左)対面開催 (右)オンライン開催 ■開催趣旨 -----  資産運用アドバイスを手掛ける、弊社(東京都千代田区、代表取締役社長:堀江智生、株式会社Japan Asset Management 以下「JAM」)では、2022年3月22日に清水ヶ丘高等学校および呉青山中学・高等学校(所在地:広島県呉市青山町 校長:斎藤 美由紀)にて中学3年生~高校2年生を対象とした金融教育出張授業「JAMアカデミー(参加費無料)」を開催いたしました。 2022 年 4 月より高等学校家庭科における「金融教育」必修化の開始や、成人年齢の引き下げに伴い近年では若年層への金融教育の重要性がより高まっています。 こうした背景を踏まえ、 生徒の理解度に応じて「人生の大きな支出」「お金の貯め方・増やし方」「株価はなぜ動くのか」といった内容の参加型授業を通じて学ぶ機会を提供し、子供たちの金融リテラシーの向上に貢献できればと思い開催に至りました。 2019 年より開始した「JAMアカデミー」は、今回で21回目の開催を迎えました。オンラインでの出張授業も行っておりますが、本出張授業は3月21日をもって全国的にまん延防止等重点措置が解除されたタイミング(広島県では3月6日に解除)で、対面にて取り行いました。受講者は既に700人を超え、 満足度は 98%と高い評価をいただいております。 本金融教育事業は今後も継続して行っていく予定です。 ■出張授業概要 ------- 開催日時: 2022年3月22日(火) 9:40~12:15 ※2,3,4限目 開催方法: 対面   会場 広島県呉市青山町2-1(大教室)                                                【清水ヶ丘高等学校】HP:https://www.shimizugaoka.jp/ 【呉青山中学・高等学校】HP:https://www.kureaoyama.ed.jp/   参加者 中学3年生~高校2年生(計61名)                                              ・清水ヶ丘高校へ通う生徒16名(高校2年生) ・呉青山中学・高校へ通う生徒45名(中学3年生・高校1年生)   概要 1)1時間目(9:40-10:25)「ライフプランと意思決定」 2)2時間目(10:35-11:20)「お金の貯め方・増やし方」 3)3時間目(11:30-12:15)「株価と決算書とは何かを理解する」                                                *45分(授業1限分)× 3 ■セミナー内容について ----------- 1)1時間目(9:40-10:25)「ライフプランと意思決定」  ・生まれてから高校卒業までにいくらお金がかかる?  ・人生の3大費用  ・ニーズとウォンツとは  ・ディシジョンツリーを使った意思決定  ・貯蓄の2つの目的 ◆Work.1   「生まれてから高校卒業までにかかったお金」は実際どのくらいなのか、生徒一人一人にワークシートを配布し、予想した金額を書き込んでもらいます。 そこから生活費や教育費に視点を当て、更には人生の最大費用について解説していくことで、お金を計画的に準備していくことの必要さを身近に感じてもらいました! 2)2時間目(10:35-11:20)「お金の貯め方・増やし方」  ・金利について知ろう  ・お金はどのようにして増えていくの?  ・単利と複利  ・72の法則  ・色々なお金の増やし方  ・金融商品の3つの特性   ・リスク・リターンの関係性 Work.2 お金はどのようにして増えるのか、金利を題材に参加型のクイズを出題しその仕組みを学んでもらいます。さらに「何年預ければお金が2倍になるのか?」72の法則を交えながら、長期投資や「お金が働く」ということについて分かりやすく解説! *3)3時間目(11:30-12:15)「株価と決算書とは何かを理解する」 *  ・株はなぜ動くのか  ・株価を計算で求めよう  ・決算書とは  ・株価を予想してみよう!株価ダービー Work.3 穴埋め形式のワークシートを用いて、株価がどういう計算で算出されるのかを説明!投資とギャンブルの違いを感じてもらいました。 次に、身近な企業も交えながら「もし100万円持っていたら、どの企業に投資をするか」を予想し、この5年間で株価がどう変動したのか実際のデータを用いて答え合わせをしました。 ■登壇者紹介 ------ 【吉田 友哉】 新卒で野村證券株式会社入社。約1000人を超える富裕層個人の資産管理アドバイスや、年間100人を超える法人オーナーの新規開拓を行い、エリア別/全国社内表彰を受賞。2019年に野村証券を退社、株式会社Japan Asset Managementに所属。 金融教育に着目し、社会人に向けたセミナーや、学生を対象にした授業を展開するため、JAMアカデミーを立ち上げ、理事長に就任。立命館大学法学部卒。 【盛永 裕介】 新卒で株式会社JapanAssetManagement入社。早稲田大学大学院教育学研究科修了。 大学院在学時、私立中高一貫校にて教員として勤務し、いつかは学校を作りたいと志す。代表の堀江に「一緒に金融教育の学校を作ろう」と誘われ、新卒一期生として入社。 JAM ACADEMY塾長に就任し、年間2,000名以上の学生に金融教育プログラムを提供。金融教育事業を拡大するために、外部パートナーとの協業を通じたビジネス開発を推進中。豊富な金融知識や分かりやすい資料作りのノウハウを活かし、セミナー資料作成やセミナー講師としてマーケティング業務にも従事。 小学校教諭二種免許状、中学校教諭専修免許状(技術)、中学校教諭二種免許状(家庭)、高等学校教諭専修免許状(情報、工業)、証券外務員一種保有。 講師への取材や出張授業の見学も可能でございます。お気軽にお問い合わせください。 ********************* 本件に関する問い合わせ先 Japan Asset Management 広報 恒次若菜 wakana.tsunetsugu@japan-am.info 03-6427-4201 *********************
2022.04.25