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【知っておきたい】独特な仕組みで急成長中のイスラム金融とは?
Column

イスラム金融ってなに?

こんにちは。Japan Asset Managementでございます。

皆さんは「イスラム金融」という言葉をご存知ですか?

イスラム金融は近年、高水準の石油価格に支えられた中東諸国の金融資産の蓄積や、所得水準向上と投資家層の拡大等を背景に急成長を続けているビジネスです。

世界の総人口の約4分の1を占めるイスラム教徒の生活水準向上とともにイスラム金融市場は今後更に拡大すると考えられます。


(出所:ICD-Thomson Reuters“Islamic Finance Development Report 2020”より筆者作成)

そこで今回は、イスラム金融について分かりやすくご説明します。
日本ではまだ馴染みの薄いビジネスですが、この記事を参考に少しでも皆様の金融知識が深まれば幸いです。

 

「様々なルールを持つイスラム金融」

イスラム金融とは、イスラム教の聖典であるコーランや預言者ムハンマドの言行に基づき、イスラム教徒の生活規範であるスンナを法源とするイスラム法を遵守する銀行取引・証券取引・保険取引といった金融取引のことを言います。


※1「GCC諸国」:湾岸協力会議(わんがんきょうりょくかいぎ、英語:Gulf Cooperation Council)は、中東・ペルシア湾岸地域における地域協力機構のことであり、加盟国は、アラブ首長国連邦・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビアの6ヵ国。
(出所:ICD-Thomson Reuters“Islamic Finance Development Report 2020”より筆者作成)

 

日本人はあまり耳にしないカタカナがたくさん出てきて、ここまで聞いただけでも日本と全く異なるビジネスをしていることがお分かり頂けるかと思います。

加えて、イスラム金融には4つの主要原則があるのです。順番にご説明します。

 

 

(1) 利子・利息を授受してはならない

イスラム金融において貨幣は単に交換するための手段で、利益を生み出し自分が得をするためのものでは無いとされています。
よって、資金を貸し借りしたことによって生まれた利子や利息を受け取ることは、搾取的な不労所得として禁止されています。

 

(2) 禁避的行為をしてはならない

イスラム金融は一言で言えば「イスラムの教義(シャリア)に即した金融」です。
イスラムの教義によれば、ムスリムがアルコール・豚肉・タバコ・武器などの禁制品を取引したり利用したりすることを禁止しています。

これにより、イスラム金融においては豚肉加工事業や酒類の製造販売事業への投融資も行うことが出来ません

 

(3) 不確実な取引をしてはならない

同様にイスラムの教義によって、イスラム金融において数量や価格等の条件が不確実な取引は、詐欺的要素を含みかねないもの・当事者間に不公平をもたらしかねないものとして禁止されています。

 

(4) 投機的取引をしてはならない

リターンを生み出すための手段であるため、賭博的行為や投機的行為を用いることは禁止されています。これも同じくイスラムの教義によるものです。

 

このように、イスラム金融においては4つの原則が唱えられています。これを聞くと次はイスラム金融がどのように利益を生み出しているのか気になりませんか?

そこで今度は、イスラム金融における金融取引の形態についてお話しします。

 

「イスラム金融の取引形態」

先述の原則を守るべく、イスラム金融では主として5つのスキーム(*1)を用いて金融取引を行っています。1つずつ、ご説明しますね。

(1)ムラバハ

銀行が顧客に代わって商品を購入し、銀行が受け取るマージン(*2)をその購入価格に上乗せして顧客に売却します。
マージンを上乗せすることで、銀行は「利子」を受け取らない形で利益を獲得することが出来ます。

 

(2)イスティナ

イスティナは新築住宅の取得やプラント設備のように、これから建設するため契約時点では実物資産が存在しない場合に用いられるスキームです。
ムラハバとの違いは、ムラハバでは契約時点で実物資産が存在しているということです。

 

(3)イジャラ

リース(*3)料金と購入代金の差額を銀行の利益とするスキームです。

銀行は機械設備や建物などの商品を所有・購入し、顧客にリースします。銀行は商品の購入代金を上回るようにリース料を設定し、一定期間にわたって顧客からリース料を受け取ります。

 

(4)ムシャラカ

銀行と顧客が資金を出し合って共同事業の経営を行い、その事業によって得た収益を銀行と顧客が予め定めておいた比率に応じて配当として配分するというスキームです。

銀行と顧客は双方が共同事業の経営に参加することが出来ます。

 

(5)ムダラバ

銀行が顧客から集めた資金を事業者に投資し、事業者はその資金を自らの事業に投下します。その事業から得られた利益を事業者、銀行、顧客で予め定めておいた割合に応じて配当として配分するというスキームです。

ムシャラカとの違いは、ムダラバでは資金提供者も銀行も事業経営に参加しません。

 

イスラム金融の取引形態は独特で、4つの原則を遵守しながら丁寧にスキームが作られているのが分かりますね。
独自のルールが複雑に交じり合うイスラム金融。イスラム圏の金融機関やムスリムのみが参加することを許された経済活動、そう感じられた方もいらっしゃるかと思います。

結論を言えば、そんなことはないんです。

 


(*1)「スキーム」:ビジネスにおいて計画・構想・枠組みという意味をもつ。やり方や取り組み方
(*2)「マージン」:販売価格から原価を差し引いたもの、本文では手数料のこと
(*3)「リース」:土地や建物を長期的に貸し出すこと

 

「イスラム金融は誰のもの?」

イスラム圏の金融機関が、ムスリム顧客を対象に商品やサービスを提供しているケースが確かに一般的ではあります。

しかしながら、欧米の金融機関がイスラム金融に参加して商品やサービスを提供するケースもあれば、ムスリムでない人が利用するケースもあります。
さらに言えば、イスラム圏の金融機関が私たちに馴染みのある金融サービスの枠組みで商品・サービスを提供することもありますし、ムスリムがその商品・サービスを利用することもあります。

つまりどこの国の金融機関かは関係ありませんし、ムスリムかムスリムでないかも問題ではありません。乗り入れは相互に行われているのです。
実際に日本でも2008年に改正銀行法規則が施行され、銀行・保険会社の子会社・兄弟会社に限ってイスラム金融業務が認められました。2011年には資産の流動化に関する法律の改正によって、イスラム債(*4)は社債と同等の性質を有する証券として国内でも発行可能になっています。

イスラム金融は、限られた地域や人々の中で行われているビジネスではありません。実は身近なところでも扱っているのです。

 


(*4)「イスラム債」: イスラム金融の取引によって得られる収益を証券化した商品のこと。別名スクーク。

 

最後に

いかがだったでしょうか?今回はイスラム金融についてお話ししました。
一見関係のないビジネスに見えても、蓋を開けてみると私たちにも共通する原則があったように思います。

例えば、投機的取引は日本においても行うべきではありません
なぜなら、この取引における売買代金は適正な価格でないことが多いためです。
過去数年間に渡り急速に拡大を続けてきたイスラム金融ですが、2つの点より今後ますます市場拡大することが見込まれています。

1つ目はイスラム金融の資産規模は,世界全体の金融資産規模からみればわずか1~2%程度であると見られている点です。
しかしながら、2000 年以降イスラム金融は資産残高ベースで年 15~20%の高い率で成長を続けており,国際金融の中でも無視できない存在になっています。

2つ目はイスラム圏以外でもイスラム金融の商品やサービスを利用することもある点です。
日本企業でも資金調達の多様化という課題に対する1つの解決策として、より広く活用されてゆくでしょう。

 

また、日本や欧米諸国と全く異なるロジックを持つイスラム金融の仕組みを知ることは、イスラム文化への理解に繋がるはずです。

この記事がイスラム金融のみならず他国の文化を理解する1つのきっかけになって頂けたら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。