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信託型ストックオプションとは?(後半) - 最新トレンドと税制改正の影響を深掘り
Column

皆様こんにちは。 株式会社 Japan Asset Managementです!
前半部分ではストックオプションの基本的な概要について詳解しました。後半部分では、その具体的な種類を詳しく紹介し、 特に最近ニュースで話題になっている「信託型ストックオプション」について深堀りしていきます。

[目次]
・ストックオプションの種類
・信託型ストックオプション
・まとめ


ストックオプションの種類

ストックオプションは、付与の際に支払いが発生するかによって無償と有償に分類することができます。 この分類によって適応される税率や、税金が発生するタイミング、各種所得の分類が異なる点に注意が必要です。

⚫︎ 無償

①無償税制適格ストックオプション
・行使期間についての厳しい要件を満たす必要がある
・権利行使時は課税されないが、株式譲渡時に譲渡課税が適用される(最大約20%)
・所得税減免にはならない

②無償税制非適格ストックオプション
・行使への要件はない
・権利行使時に給与課税(最大約55%)、株式売却時に譲渡課税が適用される

〈活用型〉1円ストックオプション
・行使価格が1円のため金銭的負担が少なく権利行使しやすい
・退職金としてよく利用され、課税も退職金扱いになる(最大約25%)

⚫︎ 有償

・権利付与の際にストックオプション1つあたりの価格である発行価額に対する支払いが発生するため従業員の資金的余裕が必要
・権利を行使するまでは課税されない
・株式譲渡時にのみ課税されるため無償のものより税率が低い(最大約20%)

信託型ストックオプション

信託型ストックオプションは、どの種類に分類されるのでしょうか。実は、信託型ストックオプションは、 有償ストックオプションに分類され、その一種であると言えます。具体的な仕組みは次の通りです。

①企業が発行したストックオプションを全てまとめて信託機関に割り当てる
②権利行使前の保管期間中に信託機関からは、従業員にはストックオプションと交換できるポイントを付与する
③期間終了後に企業が成果に応じて指示した数のストックオプションが信託機関から割り当てられる

この制度は、従来のストックオプションでデメリットとなっていた既存株式の価値低下や、権利付与時期によって利益に差が出る従業員の不満を解消すべく、 2014年に弁護士の松田良成氏とプルータス・コンサルティングが考案した制度です。現在では既に約800社の企業が導入し、うち約100社が上場しています。

では、なぜこの制度が今話題になっているのでしょうか。それは企業と国税庁との間で課税の取り扱いに関する見解が分かれているからです。 信託型ストックオプションの課税に関して、多くの企業は、信託型ストックオプションが有償型ストックオプションの活用型であるということから、 株式売却時に譲渡所得として課税(約20%)されると認識していました。
しかし、国税庁としては、信託型ストックオプションに関しても役職員へのストックオプションの付与を目的としたものであるという立場を示しています。 つまり、株式取得時点で給与所得として課税(約55%)されるべきとの立場を明らかにしました。 さらに、既に行使されたオプションについても、時効となる5年以内のものは遡及して源泉徴収が必要との見解を示し、両者の間で対立が起きています。

この対立は、権利行使を行った個人だけでなく、企業にも影響を与えています。企業は決算の修正を迫られ、スタートアップや新規上場企業では、 資金繰りに影響を与える可能性があります。
さらに、スタートアップ企業の報酬に重税がかかることとなれば、日本政府が推進するスタートアップ支援の方針と相反することとなり、 一般企業でも株式報酬の導入が進まなくなる恐れがあります。


まとめ

多くのベンチャーやスタートアップは、報酬負担を軽減するためにストックオプションを活用しています。 しかし、最近の国税庁の見解公表により、個人と企業双方の税負担増と人材流出リスクが生じています。これは特に財務的に厳しい企業にとって大きな打撃となり得ます。
この問題を受けて、経済産業省と国税庁は税制改正とルール緩和に向けた動きを見せています。 これにより、信託型から税制適格ストックオプションへの移行が進むことが期待されています。
しかし、企業は新情報を素早く把握し、資本政策を見直すなどの対応が求められています。 そして、国税庁の公表後に株価が下落した企業もあり、市場全体への対策が求められています。
海外と比較してストックオプションの制度が未整備との指摘もあり、税制改正と適格ストックオプションの動向が注目されます。 税務と会計ルールの整備が重要であり、関係各所の議論と連携が求められています。

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